大阪弁護士会の活動

ハーグ条約

ハーグ条約とは

「ハーグ条約」とは何ですか。

1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択され,1983年に発効した「国際的な子どもの奪取についての民事上の側面に関する条約」のことです。
ハーグ条約は,①監護権の侵害を伴う,②16歳未満の子どもの,③国境を越えた移動を適用対象としています。

何を目的として採択された条約なのですか。

国境を越えて子どもが連れ去られた場合に,子どもの迅速な返還を実現することを目的として定められたものです。

なぜ「迅速な返還」を実現する必要があるのですか。

外国への子どもの連れ去りは,子どもにとって生活環境が突然急変するのみならず,他方の親や親族・友人などとの交流が断絶され,また,異なる言語文化環境にも適応しなくてはならなくなる等,子どもにとって有害な影響を与える可能性があるためです。

常に子どもは元の居住国に戻されるのですか。

ハーグ条約自体,「子どもの返還が,身体的若しくは精神的な害を及ぼし,又は子どもを耐え難い状況に置くことにある重大な危険がある場合」等,返還の適用除外事由を定めており,常に元の居住国に戻されるわけではありません。

子どもを元の居住国に戻す以外に,ハーグ条約が子どもの利益のために定めている内容について教えてください。

国境を越えて連れ去られたため子どもが元の居住地にいる親と面会できないという状況が生じることから,ハーグ条約は,親子の面会交流の機会を確保できるよう加盟国が支援をすることについても定めています。

ハーグ条約の加盟国数について教えて下さい。

2014年1月現在91です(EUを含む)(出典:外務省HP)。

日本はハーグ条約に加盟しているのですか。

日本は長年の間未加盟でしたが,2013年5月22日に国会でハーグ条約の締結が承認され,ハーグ条約に加盟することとなりました。その後,国内で条約を実施するための法整備が進められ,2014年4月1日にハーグ条約が発効しました。

日本がハーグ条約に加盟したことによって,何が変わったのですか。

日本がハーグ条約に加盟していなかったことにより,日本から子どもが連れ去れた場合,連れ去られた先の国に子どもの返還を要求できないという問題がありました。他方,日本がハーグ条約を未締結であることを理由に,日本人親が子どもと一緒に居住国から日本へ一時帰国することができないといった事態も現実に生じていました。

しかし,日本がハーグ条約に加盟したことにより,次のように,子どもの迅速な返還を実現するとともに,親子の面会交流を図るための枠組みが利用できるようになりました。

  1. 日本からA国へと子が連れ去られた場合,連れ去られた日本の親は,条約に基づいてA国から日本に子の返還を求めることができます。
  2. B国から日本へと子が連れ去られた場合,連れ去られたB国の親は,条約に基づいて日本からB国に子の返還を求めることができます。
  3. C国から日本へ子を連れて帰るために一時帰国の申請をC国にする場合にも,ハーグ条約に基づいて子の返還を求める手立てが確立したことにより連れ去りの恐れが減った結果,一時帰国が不許可となる可能性が低くなり,一時帰国が以前に比べて行いやすくなります。
  4. 離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行う面会交流をするための各種支援が受けられるようになります。

ハーグ条約はどのような場合に適用されるのですか。

連れ去り先,連れ去り元の国が双方ハーグ条約の締結国である場合に,その国境を越えて16歳未満の子を不法に連れ去った場合に適用されます。適用を受けるかについて,父親,母親,子の国籍は関係なく,日本人同士であっても適用される可能性があります。

条約が日本において発効する前に子の連れ去りが起きた場合,ハーグ条約は適用されるのですか。

子の国境を越えた連れ去りが,日本においてハーグ条約が発効した2014年4月1日よりも前に行われた場合には,ハーグ条約に基づいて,子どもを元々居住していた国に返還するように求めることはできません。ただし,条約が発効する前に子どもの連れ去りが起きた場合であっても,条約に基づいて,子どもとの面会交流を実現するための援助を要請することは可能となります。

ハーグ条約に関する法的手続を行うために,どのような支援が存在しますか。

  1. 日本の中央当局(外務省)が申込窓口となって,日本弁護士連合会によるハーグ条約に対応する弁護士を紹介する制度が設けられています。(参照:日弁連弁護士紹介制度)
    中央当局
    (外務省領事局ハーグ条約室)
    〒100-8919
    東京都千代田区霞ヶ関2-2-1
    Tel 03-5501-8466
    E-mail hagueconventionjapan@mofa.go.jp
    また,急いで弁護士を紹介してもらいたい場合(例えば,日本に子を連れ帰ってきた親で,子の返還の裁判が近く予定されているような場合),各地の弁護士会で対応可能な弁護士を紹介できる場合もありますので,お問い合わせください。
    大阪弁護士会
    (法律相談部相談一課)
    Tel 06-6364-1248
    Fax 06-6364-5069
    E-mail soudancenter@osakaben.or.jp
  2. 日本司法支援センター(通称「法テラス」)の提供している法律扶助により,弁護士費用等の貸付制度を利用できる場合があります。
    収入等が一定額以下であること等の要件を満たす必要がありますが,無利息で弁護士費用・通訳費用・翻訳費用などが立て替えられ,原則として分割で返金することとなります。(参照:法テラス民事法律扶助)
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