大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

大阪刑務所の昼夜単独室に収容されている受刑者が全国戦没者追悼式の中継ラジオ放送の聴取を希望しない場合には、同室での同放送を止めるように勧告した事案

2020年(令和2年)2月25日

【執行の概要】

1 申立人は、2016年(平成28年)3月に大阪刑務所に収容され、同年7月26日から同年8月19日までの間、懲罰の一つである閉居罰を科されて昼夜単独室に収容されていた。
大阪刑務所は、収容者に対し、刑事被収容者処遇法に基づいて、平日の夜間、休日の昼夜、公共放送又は民間放送等によるラジオ放送の番組を聴取させていたが、他方で、閉居罰を科されている収容者に対してはラジオ放送を原則として聴取させていなかった。

2 大阪刑務所は、2016年(平成28年)8月15日月曜日午前11時50分までに、申立人のいた昼夜単独室のある居室棟のすべての居室のラジオスイッチ(各居室の室外に設置)を入れ、同時刻から午後0時5分までの間、全国戦没者追悼式をラジオ放送した。
申立人は、全国戦没者追悼式について、主催者が政府であること、政教分離に違反していること、又は、戦没者にA級戦犯が含まれていること等から否定的な思想を有していたため、そのラジオ放送が始まってから、大阪刑務所の職員に対し、ラジオのスイッチを切ってほしい旨を申し出たが、認められなかった。

3 戦没者の追悼については、個人の世界観等に立脚した様々な方法があり得るところであり、政府の主催する全国戦没者追悼式に一定の宗教性や政治的党派性が含まれることは否定しがたく、同式のラジオ放送を聴取したくないとの意向は、思想良心に関わる重大な人格的利益といえる。そして、本件における全国戦没者追悼式の放送は、ラジオ放送を原則として聴取させない閉居罰中の受刑者に聴取させるものであるうえ、申立人がラジオのスイッチ操作を自由にできない状況下で放送するものであり、その思想良心の自由を侵害することのないよう、必要性・相当性が慎重に検討されなければならないが、それらを欠くものとして、大阪刑務所の昼夜単独室に収容されている受刑者が全国戦没者追悼式の中継ラジオ放送の聴取を希望しない場合には、同室での同放送を止めるように勧告した。

大阪刑務所の昼夜単独室に収容されている受刑者が全国戦没者追悼式の中継ラジオ放送の聴取を希望しない場合には、同室での同放送を止めるように勧告した事案

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