大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

1.留置施設の担当官が留置者を外部医療機関で受診させる際、手錠カバーを装着せず、留置者が手錠を掛けられた姿を外来患者等に見られたことが留置者の人格権等を侵害したとして、護送中は、留置者に掛けられている手錠が見えない措置をとるよう勧告した事例。
2.留置施設の担当官が、留置者の同意なくその氏名を他の留置者に開示したことが留置者のプライバシー権等を侵害したとして、留置施設においては、留置者の氏名等の個人情報を、本人の同意なく他の留置者に開示しないよう勧告した事例。

2021年(令和3年)7月26日

【執行の概要】

1.(1)刑事手続により身体拘束を受けている者にとって、手錠が付された自らの姿を衆目に晒されることは、その尊厳を傷つけられ、耐え難い屈辱を受けるものである。
殊に、無罪の推定を受ける被疑者の護送にあたっては、逃走防止のためにやむを得ず戒具等を使用する場合であっても、手錠や腰縄がむき出しのまま衆目に晒されないようにするなどして、人権に十分な配慮を要する。
(2)本件で認定した事実によれば、申立人は手錠が付されていたにもかかわらず、同行した警察官が手錠カバーの携行を失念したことにより、申立人は手錠カバーが装着されない状態で、警察車両から病院内の診察室まで移動させられた。少なくとも、同行した警察官が手錠カバーの携行を失念していることに気付いた時点で、手錠カバーを警察署まで取りに戻るか、別の警察官に手錠カバーを届けさせるなどして、手錠が見えない措置をとるべきであった。
にもかかわらず、同行した警察官らは、かかる措置をとることなく、警察車両を降車し診察室に入室するまで間、申立人の手錠姿を衆目に晒した。その結果、申立人は耐え難い屈辱を受け、その尊厳を深く傷つけられている。
警察官が、無罪の推定を受ける申立人の手錠姿を衆目に晒した行為は、憲法13条、同31条、国際人権自由権規約7条及び同10条に違反する重大な人権侵害であることから、再発防止を期して、勧告した。

2.(1)刑事施設においては、刑事施設の長は、収容開始に際し、被収容者に対し称呼番号を付して、これを被収容者にも告知することとされており(平成18年5月23日被収容者の収容の開始に関する訓令9条1項)、刑事施設内では被収容者はその番号で称呼される。これにより、刑事施設内では、留置者自身が明らかにしない限り、他の留置者に自らの氏名を知られることはなく、結果として留置場内で「氏名」という「個人情報」の保護が図られている。
(2)にもかかわらず、淀川警察署留置担当者は、申立人の同意を得ることなく、他の留置者に対し、申立人の氏名を開示した。かかる行為は、明らかに、申立人の個人情報をみだりに公開されない権利(プライバシー権、憲法13条)を侵害しており、違法なものである。
よって、再発防止を期して、勧告した。

1.留置施設の担当官が留置者を外部医療機関で受診させる際、手錠カバーを装着せず、留置者が手錠を掛けられた姿を外来患者等に見られたことが留置者の人格権等を侵害したとして、護送中は、留置者に掛けられている手錠が見えない措置をとるよう勧告した事例。
2.留置施設の担当官が、留置者の同意なくその氏名を他の留置者に開示したことが留置者のプライバシー権等を侵害したとして、留置施設においては、留置者の氏名等の個人情報を、本人の同意なく他の留置者に開示しないよう勧告した事例。

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