大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

大阪拘置所は、刑事被拘禁者が、今後同所に対し、裁判所から呼出状が送付されるなど出廷を求められ、それを理由として出廷する許可を申し出た場合、原則として出廷を許可すべきであり、例外として当該具体的事情の下で、出廷を許可することによって同所内の規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる具体的蓋然性があると十分な根拠に基づいて認められ、そのため出廷を制限することが必要かつ合理的と認められる場合に限って不許可とされるよう勧告する。

2022年(令和4年)3月22日

【執行の概要】

大阪拘置所に収容されていた申立人が民事裁判(損害賠償請求事件)を提訴したところ、第1回口頭弁論期日は当事者双方が不出頭で休止となった。申立人は、第2回期日について大阪拘置所に出廷願を出していたが、大阪拘置所は、管理運営上の理由で出廷押送について消極的である旨を係属裁判所に連絡した上で、申立人の出廷を認めなかった。その結果、第2回期日も当事者双方不出頭となり、係属裁判所は民事訴訟法263条後段の規定(当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときは、訴えの取下げがあったものとみなす)を適用し、申立人の当該訴訟をみなし取り下げで終了させた。なお、申立人の当該訴訟については訴訟救助決定がなされていた。
権利・自由が侵害されたときに司法救済を受けられなければ、権利・自由を保障する実質的な意義が失われるので、裁判を受ける権利(憲法32条)は重要な人権として最大限尊重されるべきであり、また、裁判の対審が公開法廷で行われることが憲法82条1項で定められている以上、裁判の当事者が主張立証のために裁判所に出廷する権利も保障されなければならない。
出廷権を含め裁判を受ける権利は、その重要性に鑑み、刑事被拘禁者にも保障されるべきであり、出廷が認められず、十分な訴訟活動を行うことができなければ、本件のように訴訟が終了してしまう場合もあり、公平かつ公正な裁判を受ける権利が実質的に侵害されることとなる。
刑事被拘禁者は、拘禁目的や施設内の規律保持の要請に照らし、移動の自由等の制限を受けなければならない面はあるものの、個人の尊重(憲法13条)を保障する憲法のもと、刑事施設による権利制限は、拘禁目的と施設管理の規律保持のための必要最小限のものに限られるべきであって、出廷権の重要性に鑑みれば、刑事施設長に、出廷の許否に対する広範な裁量を認めるべきではなく、拘禁目的と施設管理の規律保持のために放置できない程度の障害が生ずる具体的な蓋然性と根拠があり、出廷を制限することが必要かつ合理的と認められる場合に限って出廷権の制限が許されると考えるべきである。
そして、本件では、出廷が認められなければ訴訟の取下げとみなされうる重要な期日であったこと、現行の民事訴訟法上、弁護士の訴訟代理は強制されておらず、また、刑事被拘禁者にとって弁護士選任は困難であること、貴所が本件出廷を不許可とした理由について「護送車両及び戒護職員等を確保する必要があるため、管理運営上の支障が生じる」という抽象的な説明しかしておらず、具体的な制限の必要性や根拠を検討した形跡がないことに照らせば、申立人の出廷を不許可とした貴所の行為は、申立人の裁判を受ける権利に対する重大な人権侵害行為であり、上記のとおり勧告するものである。

大阪拘置所は、刑事被拘禁者が、今後同所に対し、裁判所から呼出状が送付されるなど出廷を求められ、それを理由として出廷する許可を申し出た場合、原則として出廷を許可すべきであり、例外として当該具体的事情の下で、出廷を許可することによって同所内の規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる具体的蓋然性があると十分な根拠に基づいて認められ、そのため出廷を制限することが必要かつ合理的と認められる場合に限って不許可とされるよう勧告する。

ページトップへ
ページトップへ