大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

警察署留置担当官は、被収容者が喉から出血した事実を把握するなど、重大な結果を引き起こしかねない疾病に被収容者が罹患している疑いをもったときは、病院を受診させる等、速やかに必要な医療上の措置を執るよう勧告した事例

2023年(令和5年)3月29日

【執行の概要】

1 留置施設に収容されている被留置者であっても、個人として尊重され、公共の福祉に反しない限り、生命、自由及び幸福追求に対する権利について最大の尊重を受け(憲法第13条)、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(憲法第25条)も保障されている。
 かかる保障を受け、刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律(以下、「法」という。)第201条第1項柱書及び第1号は、被留置者が負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるときは、速やかに、当該留置業務管理者が委嘱する医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置を執るべきことを規定している。

2 一般的に、喉からの出血という事態は、何らかの疾病への罹患を強く疑わせる事実である。留置担当官は、8月30日の洗面時、申立人から喉から出血した事実を聞いており、その2日後の9月1日にも、申立人から、喉から出血した事実を聞き、申立人の着衣に血のようなものが付着していることも確認している。
 連続して喉から出血していること、着衣に付着するほどの量を喉から出血した事実から、留置担当官は、遅くても9月1日の未明の時点において、重大な結果を引き起こしかねない疾病に申立人が罹患している疑いがあると認識し得たはずであり、その時点で、速やかに病院を受診させる等、必要な医療上の措置を執るべきであった。
 にもかかわらず、担当官が、実際に申立人を病院に受診させたのは、同日の朝になってからであった。

3 以上の事実からすると、留置担当官が、連続して喉から出血している申立人に対し、速やかに必要な医療上の措置が執らなかったことは明らかであり、申立人の適切な医療を受ける権利が侵害されている。
 したがって、申立人の申出に対する留置担当官の対応は、法第201条第1項柱書及び第1号に違反し、憲法第13条及び第25条が保障する申立人の健康な生活を営む権利を侵害するものであると判断し、上記のとおり勧告した。

警察署留置担当官は、被収容者が喉から出血した事実を把握するなど、重大な結果を引き起こしかねない疾病に被収容者が罹患している疑いをもったときは、病院を受診させる等、速やかに必要な医療上の措置を執るよう勧告した事例

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