大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

受刑者に対し適時に診察を受けさせなかった事例

2015年(平成27年)6月29日

 申立人は、前収容施設である奈良少年刑務所にて平成22年1月20日及び2月8日に眼科医の診察を受け、 同月18日に大阪刑務所に収容された。

 その際、大阪刑務所は、申立人が糖尿病性網膜症の診断を受けていること、申立人の左眼に網膜出血があるが吸収傾向にあること、右眼に新生血管からの出血が少しみられること、3~4週間に1度の定期的診察が 必要である旨の申し送りを奈良少年刑務所から受けていた。

 しかしながら、大阪刑務所は、奈良少年刑務所からの申し送り事項を遵守せず、申立人に対し、医師による定期的な診察を実施しなかった。そのため、申立人は平成22年6月17日に自ら左眼の異常を訴えるまで4カ月の間、医師による診察を受けられず、さらにその約2か月後にある同年8月9日に至るまで眼科の専門医の診察を受けることができなかった。

 その後、申立人は、平成22年8月23日、大阪労災病院眼科にて入院手術を受けた。しかしながら、 大阪刑務所に入所した平成22年2月18日時点では、左眼につき矯正視力0.7であったものが、平成23年2月9日 時点では矯正視力0.08まで低下してしまった。

 科的疾患など専門的診療科目に属する疾患については、他科の医師では診療が困難であるから被収容者の 既往及び現時の状態を可能な限り確認したうえで、速やかに専門医による診療の機会を設ける必要がある。
にも拘らず、大阪刑務所が眼科医の診断医基づく前収容施設の申し送り事項を遵守せず、4カ月以上の間申立人に対し医師による定期的な診察を実施せず、眼科医による早期の診療の機会を設けなかったことは、申立人に対する人権侵害に該当する。そこで、今後、前収容施設から医師による定期的な診察が必要である旨の申し送りを受けた被収容者に対し、当該申し送り事項を遵守し、定期的な診察を適切に実施すること及び、被収容者が心身の異常を申し立てた場合、被収容者の既往歴及び健康状態を十分に確認のうえ、眼科的疾患など専門医による診療が望ましいときは速やかにこれを実施するよう、勧告した。

受刑者に対し適時に診察を受けさせなかった事例

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