大阪弁護士会の活動
人権擁護委員会
視覚障害を有する受刑者に対して視力の補正器具の使用を認めなかった事例
2017年(平成29年)12月12日
大阪拘置所に収容されている死刑確定囚が、東京矯正管区及び名古屋矯正管区(以下、「各矯正管区」という。)に対し、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく行政文書開示請求を行った。各矯正管区からは、一部不開示とする決定がなされたが、本来開示してはならないとされる情報を開示したり、不開示決定をしたのに申立人に対する通知には不開示部分を特定して記載していなかったりした。そのため、各矯正管区は、開示された情報については改めて不開示とし、既に不開示とはなっているが特定していなかった情報についてはこれを特定して不開示とする決定を改めて行うことになった。これは申立人にとっては不利益変更となるため、告知・聴聞手続きを行うことになった。申立人は、「両眼視神経萎縮」により視力が減退して身体障害者2級に認定されていたところ、眼鏡による視力の矯正を期待できないものの、ルーペ(対象を拡大できるレンズが3枚付いた金属製のルーペで、レンズの組み合わせにより倍率を調整できるもの。)を用いて対象を拡大すれば判読可能であり、視力を補正できる状況にあった。
申立人は、大阪拘置所及び神戸刑務所において上記ルーペの使用が認められていたが、大阪刑務所への収容中、その使用が認められなかった。
このような大阪刑務所の対応について、同ルーペの使用を認めても施設管理上の問題が生じるとは言い難い。
これに対し、視覚障害を有する申立人にとって同ルーペの使用が認められることは、情報を取得することを意味し、単に日常生活が便利になるということにとどまらず、精神的自由権全般に関わる重大な利益を享受する。同様に、申立人に同ルーペの使用を認めることは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律等の要求する障害の程度に応じた必要かつ合理的な措置といえる。
そのため、大阪刑務所の対応は憲法21条に反する人権侵害であると認められるから、視力を補正するためのルーペの使用を認めるよう勧告を行った。