大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

2019年(令和元年)7月11日 私企業がその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと、及び、中学校の歴史及び公民の教科書採択に際して特定の教科書を採択させるための運動に従事させないことを勧告した事例

2019年(令和元年)7月11日

  1. 被申立人は不動産販売等を行う東証一部の上場企業であるが、大韓民国国籍を有する申立人を含む全従業員に対し、平成25年4月から同年7月にかけて、「韓国も中国も、日本人とは異なった国民性を持つ民族であると認識しなければなりません。私たちは親から『嘘をついてはいけません』と教育されます。しかし、中国や韓国は『騙される方が悪い』『嘘も100回言えば本当になる』と信じている国民です」等と記載した複数の文書を配布した。
    被申立人は、東証一部上場企業であり、いわば社会の公器として多様な価値観・歴史観を許容し、国籍や人種等による差別的意識を排する職場環境の構築が求められる。このような文書の配布は、いずれも被申立人の業務に必要とは言いがたく、これを保障する必要性に乏しい。したがって、平穏に生活して人格を形成し、自由に活動して名誉・信用を獲得し保有するという申立人の人格権を侵害したと評価されたとしてもその評価は不当ではない。
  2. また、被申立人は全従業員に対し、平成27年5月から同年6月にかけて、大阪府下の中学校における歴史及び公民の教科書の採択にあたって、市町村の首長や教育委員を直接説得したり、教科書展示会へ出席してアンケートに答えたりすることなど、特定の教科書を採択させるための運動に従事することを強く推奨した上で、実際に従事した運動の内容を報告することを求めた。
    教科書に対する評価は、個人の歴史観その他思想・信条と密接に結びついているところ、この一連の行為は、被申立人の業務に必要とは言いがたい上に、被申立人は、これらの報告をどのようにでも使うことができ、従業員は、かかる運動への従事によって待遇等において差別的取扱いを受ける可能性が高い状況にある。したがって、従業員が自己の思想・良心を侵害されるおそれが高いことを否定できない。
  3. よって、申立人の人権救済を図るため、当会は被申立人に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと、及び、中学校の歴史及び公民の教科書採択に際して特定の教科書を採択させるための運動に従事させないことを勧告した。

2019年(令和元年)7月11日 私企業がその従業員に対し、大韓民国等本邦外出身者の国民性を侮蔑する文書を配布しないこと、及び、中学校の歴史及び公民の教科書採択に際して特定の教科書を採択させるための運動に従事させないことを勧告した事例(PDF書類)

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