大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

大阪府教育委員会が教職員の定年後再雇用の採否を決するために、その教職員に対し、学校行事にて国歌斉唱時に起立を命じる内容の職務命令に従う意向の有無を尋ねないこと、及び、教職員が学校行事にて過去に国歌斉唱時に起立斉唱しなかったことや、今後起立斉唱する意向を表明しないことを、同委員会が教職員の再任用・非常勤講師採用を拒絶する理由として用いないこと、をそれぞれ勧告した事例

2020年(令和2年)2月4日

【執行の概要】

1 申立人ら2名は大阪府立高校の教職員であり、過去に、卒業式における国歌斉唱時に起立斉唱しなかったとして戒告処分を受けていたところ、2017年3月に定年退職を迎えるあたって希望した再任用手続きの過程で、勤務学校の校長から、今後、学校行事に際して命じられる国歌起立斉唱の職務命令に従うか否かについての意向確認をされたが、その職務命令に従う旨の意向を示さなかった。
大阪府教育委員会は、申立人らが過去に国歌を起立斉唱しなかったことと、今後起立斉唱する意向を表明しなかったことを理由に、申立人らの再任用も非常勤講師採用も拒絶した。

2 申立人らが国歌斉唱時に起立斉唱しない理由は、「君が代」が侵略国家たる過去の日本の「シンボル」であるのに、戦争の加害責任を総括しないまま国歌とされたことに憂慮を抱いていることであるところ、その思想は、独善的で特異なものではなく、一般に共有可能な歴史観や真摯な動機に基づくものであるから、思想及び良心の自由として憲法19条によって保障されている。
大阪府教育委員会が定年退職後の再任用等に際し、過去に「君が代」を起立斉唱しなかった教職員を対象に、今後起立斉唱する意向の確認をした上で、その意向を表明しなかったことを理由に再任用等を拒絶したことは、教職員の思想及び良心を理由にして差別的な取り扱いをするものであるから、教職員の思想及び良心の自由と平等権を侵害する。

3 従って、申立人らの人権救済を図るため、当会は大阪府教育委員会に対し、教職員の定年後再雇用の採否を決するために学校行事にて国歌斉唱時に起立を命じる内容の職務命令に従う意向の有無を尋ねないよう、また、学校行事にて過去に国歌斉唱時に起立斉唱しなかったことや、今後起立斉唱する意向を表明しないことを、教職員の再任用・非常勤講師採用を拒絶する理由として用いないよう勧告した。

大阪府教育委員会が教職員の定年後再雇用の採否を決するために、その教職員に対し、学校行事にて国歌斉唱時に起立を命じる内容の職務命令に従う意向の有無を尋ねないこと、及び、教職員が学校行事にて過去に国歌斉唱時に起立斉唱しなかったことや、今後起立斉唱する意向を表明しないことを、同委員会が教職員の再任用・非常勤講師採用を拒絶する理由として用いないこと、をそれぞれ勧告した事例

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