大阪弁護士会の活動

人権擁護委員会

堺市が平成28年3月に定めた「障害を理由とする差別の解消に関する堺市職員対応要領」、及び「講演会やイベント開催時の配慮」に関するガイドラインを各職員に周知徹底し、障害児者の参加が見込まれる講演会やイベントの開催時にはその内容を厳守するとともに、障害児者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上に努めることを要望した事例

2022年(令和4年)2月24日

【執行の概要】

堺市においては、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する堺市職員対応要領」(平成28年3月)が定められるとともに、「講演会やイベント開催時の配慮」と題するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)がまとめられている。このガイドラインには、「事前に参加申込みを受ける場合は、電話、郵送、ファックス、Eメール、ホームページなどできる限り複数の情報伝達手段を利用します」「耳が聞こえない方もいるので、電話受付のみの対応は避けてください」「事前に希望するサービスを把握しない場合でも、手話通訳など可能な限り障害のある人への配慮に留意します」などと記載されている。
堺市は、「堺市障害者スポーツフォーラム」を開催するにあたり、聴覚障害者が参加の意向を持つ可能性があること、堺市立健康福祉プラザの広報誌の読者に聴覚障害者が含まれる可能性があることを認識し、かつ広報記事の作成時点において、同フォーラムで手話通訳・要約筆記を実施することを決定していた。
しかし、堺市は、2019年(平成31年)1月4日付発行の上記広報誌に掲載された「堺市障害者スポーツフォーラム」の記事に、①「手話通訳」「要約筆記」の有無を記載せず、また、②「問合せ」欄に問合せ先ファクシミリ番号を記載することも失念した。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は、個々の障害者に対する合理的配慮を的確に実施するため、環境の整備に関する施策も併せて進めるよう努めることとしている(法5条)。
本件において、堺市が策定したガイドラインは、まさに合理的配慮を的確に行うための環境整備の一環として設けられたものであって、堺市が、広報誌により「堺市障害者スポーツフォーラム」を広報するに際し、手話通訳・要約筆記に関する情報を記載できない特段の事情もなくこれを記載しなかったこと、「問合せ」欄に問合せ先ファクシミリ番号を記載することを失念したことは、バリアフリー化や情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための事前的改善措置として自ら定めたガイドラインに明確に違反するものである。
そして、その違反は、聴覚障害者が「堺市障害者スポーツフォーラム」等の集会に参加する権利の行使において、聴覚障害者でない者との間で合理的な理由なく不利益に扱われるという平等原則(憲法14条)違反のおそれをも孕むものであったといえる。
したがって、当会は、堺市に対し、「障害を理由とする差別の解消に関する堺市職員対応要領」、及び「講演会やイベント開催時の配慮」に関するガイドラインを各職員に周知徹底し、障害児者の参加が見込まれる講演会やイベントの開催時にはその内容を厳守するとともに、障害児者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上に努めることを要望した。

堺市が平成28年3月に定めた「障害を理由とする差別の解消に関する堺市職員対応要領」、及び「講演会やイベント開催時の配慮」に関するガイドラインを各職員に周知徹底し、障害児者の参加が見込まれる講演会やイベントの開催時にはその内容を厳守するとともに、障害児者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上に努めることを要望した事例

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